[2月6日]京都 高倉天皇 後淸閑寺陵 正辰祭


[2月6日]
京都
高倉天皇 後淸閑寺陵 正辰祭
高倉天皇 後淸閑寺陵 正辰祭に參じました。
遺詔により淸閑寺に葬られたのは、謡曲「小督」で有名な小督局の髪を下ろされた所であつたからと源平盛衰記は傳へます(巻25)。御陵の塀の内に小督局の御墓があるとも云はれてゐて、正辰祭の時にだけ御陵の御扉が開くので、もしかしたら見えるのかもしれないと思ひましたが、かういふ話は興味本位で覗くものでもなし、淸閑寺の苔むした庭園に鎭まる、小督局の供養塔と傳はる宝篋印塔に手を合はせるだけで、私には充分でした。



ギネスブック登録の現存する世界最古の國・日本に住む私たちは、どこか感覚が麻痺してしまつてゐるところがありますが、そもそも800年以上も前の平安末期の話をしてゐるのですから、普通なら國が亡んでゐてもをかしくありません。小督局の墓に傳承地が複数あるのも古すぎてわからないだけで、どちらが正しいかを詮索する必要はなく、2つあるなら2つ、3つあるなら3つとも床しく思へばよいだけなのですが、わざわざ遺詔で淸閑寺を指定されたのは、現世では何一つ思ひ通りにできなかつた天皇が、せめて小督局が髪を下ろし晩年を過ごしてゐた淸閑寺に安息の地を求められたやうで、ひと際あはれを誘ひます。


高倉天皇にはもう一つ、有名な逸話が平家物語「紅葉」に記されてゐます。
ある夜、野分がひどく吹き荒れて、お庭の御愛玩の紅葉を吹き散らしました。翌朝、お庭の掃除役の仕丁(使用人)は、落ち葉をすつかり掃き淸めた後に、風の冷たい朝だつたので、焚き火にして酒を暖めてゐたところ、お目覚めになつた天皇はそれをご覧になり、氣分を害されるかと思ひきや、唐詩選に「林間酒を暖めて紅葉を焼く」とある故事をひいて、かへつて風流であるとお褒めになつたのでした。
今でも3月3日の雛人形に登場する「三仕丁」は、この逸話から來てゐて、「五人囃子の笛太鼓」の次段に飾られる、三體の人形「泣き上戸」「笑ひ上戸」「怒り上戸」がそれです。
思へば、平家専横の絕頂期に御年8歳で御即位。清盛の妻の妹・平滋子を母に、平徳子(建禮門院)を皇后に迎へ、安徳天皇に譲位された翌年21歳で崩御。後鳥羽天皇の父君でもある他、政治上の御事蹟は、壇ノ浦の合戰、承久の變に霞んで殆ど見えませんが、かうして見ると、不思議と雛人形の男雛に面影を見る思ひが致します。







■參考文献(國立國會圖書館デジタルコレクションより)
京都新聞社編輯局 編『皇陵に祈る』,晴南社,昭和18
山田孝雄 校訂『平家物語』下巻,岩波書店,昭和7
吉沢義則 校註『平家物語 : 応永書写延慶本』,白帝社,1961
藤村作 編『日本文学大辞典』第6巻 (はーま),新潮社,1951
三浦藤作 謹解, 武田祐吉 監修 『歴代詔勅全集』第4巻,河出書房,昭和15-18
梅若六郎 [編]『小督』,梅若流謡本刊行会,昭和15
白洲正子 著『旅宿の花 : 謡曲平家物語』,平凡社,1982.5
石川核 校『源平盛衰記』上巻,有朋堂書店,昭2

いざ、日本の傳統へ – Touch NIPPON –
ギネスブック公認の世界最古の國・日本。その建國の地・奈良と、千年の都・京都にある宿泊施設[はる家]では、築百有餘年の町家に受け繼がれた日本の傳統文化をお届けしたいと願つてをります。では、日本の傳統文化が受け繼がれた姿とは、具體的にどのやうな姿ですかと問はれれば、それは各家庭に神棚が祀られるやうになつた姿であらうと[はる家]は考へてゐます。史蹟探訪の他、神社清掃奉仕など、年間を通じて様々な祭典に奉賛する機會を通じて、日本の傳統文化に親しんで頂けましたら幸ひです。
奈良の春日大社の參道で創業した[はる家]は、三社託宣(特設サイト)ゆかりの春日大社と石清水八幡宮。大和國一之宮の大神神社、山城國一之宮の上賀茂神社と下鴨神社。石上神宮や奈良縣護國神社などで崇敬會等に奉賛してゐます。地域の氏神神社で傳統行事に參列するなど貴重な學びの機會を頂いてゐますが、[はる家]が公式サイト等で発表する内容は[はる家]が独自に責任を負ふものであり、神社関係團體とは一切関係ありません。




はる家一覧
ギネスブック公認の世界最古の國、日本。
その建國の地・奈良と、千年の都・京都に佇む、趣きの異なる築百有餘年の町家。

はる家 東山
築百有餘年の京町家、職住一體の「表屋(おもてや)造り」を傳へる[はる家 東山]。京都驛から地下鐡十五分、年間千二百萬人以上が訪れる京都東山に位置し、清水寺、祇園、南禅寺ほかへ徒歩圏内。朝晩は白川の小川沿ひを歩く清々しい散策をお楽しみ頂けます。
所在地:〒605-0026 京都市東山区古川町542番地4
[はる家 東山]のサイトを見る

はる家 梅小路
築百有餘年の京町家四棟が隣り合ふ[はる家 梅小路]。京都驛から程近く清水寺、祇園、金閣寺ほかにバス一本。町家ならではの「通り庭」があり、坪庭、出格子、圓窓、縁側など傳統的な京都の佇まひを傳へます。
所在地:〒600-8834 京都市下京区和気町1番地12
[はる家 梅小路]のサイトを見る

はる家 ならまち
國登録有形文化財(母屋、藏、門塀)。日本庭園、家族風呂、縁側つき客室など傳統的な日本家屋の佇まひを傳へます。歴史的な町並み「ならまち」に位置し、奈良公園、大佛殿ほか五つの世界遺産に徒歩圏。奈良驛からバス八分(徒歩十五分)。
所在地:〒630-8342 奈良市南袋町31番地4
[はる家 ならまち]のサイトを見る