[特集]春日大社で曾孫に語る「夫婦」
夫婦大國社
春日大社は、夫婦の神様をお祀りしてゐる。それも、2つある。1つは、本殿の天児屋命と比賣神。天岩戸の前で祝詞を読まれた神様やな。もう1つは、夫婦大國社。日本で唯一、大國主命と須勢理姫命のご夫婦の大國様をお祀りしてゐる。
普通は神社で祀られる神様は1柱やし、男性が多いけれど、春日さんは夫婦なんや。そうや「ひと柱」て数へるんやで。お守りも「ひとつ頂戴」はあかんで。「一體ください。」て言ふんや。えらい、えらい(頭撫で撫で)。
伏見人形「饅頭喰い」
上方落語『佐々木裁き』に、次のやうな話が出てくるな。
四郎吉ゆう名前の子供に、父と母のいずれが好きかと尋ねると、四郎吉は持つてゐたお饅頭を二つに割つて、どつちが美味しいと思ふかと問ひ返す。お父さんとお母さんといふのは、同じものだから、どつちが好きとか、そんなもんはないといふ話や。
日本人の夫婦の在り方、結婚といふものを言ひ得て妙やといふことで、京都の伏見人形「饅頭食い」にも採られて有名やな。せや、伏見稲荷大社の前で売つてはるやつや。
西洋の考へ方では、夫婦関係は「契約」によつて成り立つてゐる。あくまで夫と嫁は別々。個人。日本の傳統的な考へ方では、さうではなくて、はじめは別々であつた二人が、ひとつに溶け合つていく、調和していくのを目指してゐる。そこが大きな違いや。
近頃は、夫婦別姓もええんとちやうのですかといふ人があるが、それは結婚やない。マリッジなんや。キリスト教徒でもないのに教會で「アーメン」言ふてる人もあるが、誰も教へてくれへんかつたんやから仕方ないが、10年目の錫婚式(すずこんしき)などの機會に神社でやり直したらいいんや。
戦後は、占領軍の神道指令のために、学校で神道を教へなくなり、教えなくなつてゐること自體も報道規制で禁じられたから、70年以上も多くの國民は知らないままであつた。インターネットができたことで、文部科学省の公式サイトでも神道指令の原文に直接觸れられるようになり、注目を集めるやうになつたな。
籠もよ み籠持ち 掘串もよ み掘串持ち この丘に 菜摘ます児 家聞かな 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ座せ われこそは 告らめ 家をも名をも
『萬葉集』の最初の歌やな。『萬葉集』を編纂するにあたつて、最初に載せる歌は何にしやうかと考へて、大友家持が選んだのは、結婚の歌、夫婦の歌やつた。『古事記』に出てくる最初の和歌も、夫婦の和歌やな。
八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を
『萬葉集』の當時は、名を名乗ることは、すなわち結婚の了承を意味した。それだけ家の名を大事にしたし、大事にするだけの中身があつた。上の萬葉集の歌を詠まれた應神天皇は、当時は絶対的な権力者やが、その應神天皇をもつてしても、女性に力づくで何かするやうなことはない。菜つ葉を摘んでゐる娘さんに対して、名を名乗つてくださいませんか、と求婚してゐる。
しかし名乗つてくれない。そうすると、では、僕から名乗るよ。僕ね、僕ね、天皇なんだ。「我こそは」の「こそ」は二重に強調する意味やから、僕ね僕ね、と盛り上がつてくる。「天皇なんだ」といふのは、偉そうに「天皇の言ふことは聞け」と言つてゐるのではない。男性が女性に求愛する時には、鳥でも何でもそうやが、當然に自分の一番よいところを見せる。アピールする。格好悪いところを、わざわざ見せる者はゐない。それが天皇やから、一番の特徴である天皇だと言ふてゐるだけで、世の男性はみんな、自分の一番よいところを言ふわけや。
男性から申し込むいうのも大事なことやな。『古事記』でも、國生みの時、伊邪那岐命から声を掛けないと上手く出産に至らなかつた。受け入れるか断るかを決めることができるのは女性や。日本は傳統的に男性優位と勘違いしてゐる人があるが、明らかに女性優位やな。男性は「男なら耐えてみせろ」と試練ばかり与えられてゐる。
春日大社の夫婦大國社は、靴を脱いで拝礼できる。靴の脱ぎ方は、普通の家であれば、真つ直ぐ靴を脱いで上がつたら、その後、振り向いて靴の向きを反対向きに揃えるが、神社の場合は違ふ。真つ直ぐ前を向いて靴を脱いで上がつたら、靴はそのままにして進んだらいい。さうしておいて、帰る時も、神様にお尻を向けずに靴を履いて退席する。
夫婦大國社の横に、赤乳白乳両社いふお社もあるな。女の子は、卵子の元となる一生分の「原子卵胞」が、まだ赤ちやんの内から既にお腹の中にできてゐる。あとは一ヶ月に一回、排卵していくだけで、新しい卵子が作られてゐるわけではない。差別や平等と履き違えてゐる人があるが、新鮮な内に産んだ方がええに決まつてゐる。小中学校で避妊具の使ひ方を教えてゐると聞いて背筋が寒くなるけれども、さういうことよりも、最も大事な自然の摂理を教へないといけない。
戦後、占領軍が家族制度を破壊した影響が長く残り、結婚も、子供が勝手に相手を見つけてくるものやと一般に思われてしまつてゐるが、日本の傳統的な考へ方では、溶け合おうと努力する新郎新婦を、ふたつの異なる家族同士が心を一つにして共に支へていくのやから、当然に結婚相手は親が決める。自由や人権などと、聞こえのよい言葉を並べ立てて、その実、要は、放つたらかしやつたんやが、さうして70年も経った結果が、3人に1人も結婚してない(令和元年:人口動態統計)少子高齢社會と言はれる有様になつた。10代20代の子供に判断できるものと違ふんや。保育園が足らんからでも、所得が低いからでもないんや。日本の傳統が見直されるやうになれば、はじめて変わつてくる。
春日大社の夫婦大國社は、元々は、若宮さんにご飯を作るための建物やつたんや。本殿の天児屋命と比賣神の間にお生まれになつたのが若宮さんやな。明治に神仏分離令が出されるまでは興福寺のお坊さんが夫婦大國社の建物を守つてはつた。神さんと仏さんの話は、またしよな。ひとつひとつ傳へていくな。
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京都と奈良の傳統行事
毎月
リンクから各公式サイトをご覧いただけます。
■毎日※但し祭典執行日は行なわれません。
[奈良]春日大社 9:00 朝拝(朝拝スケジュール)
春日大社では毎日欠かさず、朝のお参りが行なわれています。これを朝拝(てうはい)と呼び、神職の指導を受けながら豫約不要でどなたでも安心してご参加いただけます。「春日(かすが)」とは、「すがすがし」の「すが」に、接頭語「か」が付いた言葉といわれます。奈良でとびきりの清浄を味わひに、ぜひ早朝にお参りを。
■毎月 初午の日 [京都]伏見稲荷大社 10:00 月次初午祭
■毎月 初卯の日 [奈良]大神神社 10:00 卯の日祭
■毎月 初辰の日 [京都]貴船神社 10:00 初辰祭
■毎月 第一日曜日[京都]地主神社 14:00 えんむすび地主祭り
1日 [京都]平安神宮 9:30 月首祭
1日 [京都]石清水八幡宮 10:00 月始祭
1日 [京都]上賀茂神社 9:30 月次祭
1日 [京都]下鴨神社 10:00 月次祭
1日 [京都]伏見稲荷大社 月次祭
1日 [京都]松尾大社 10:00 月次祭
1日 [京都]平野神社 10:00 月次祭
1日 [京都]北野天満宮 10:00 月次祭
1日 [京都]貴船神社 10:00 月次祭
1日 [京都]八坂神社 10:00 月次祭
1日 [京都]梅宮大社 9:00 月次祭
1日 [京都]吉田神社 9:00 月次祭
1日 [京都]由岐神社 9:00 月次祭
1日 [京都]愛宕神社 10:00 月次祭
1日 [京都]粟田神社 6:00 月次祭
1日 [京都]安井金比羅宮 11:00 月次祭
1日 [奈良]石上神宮 10:00 月次祭
1日 [奈良]橿原神宮 10:00 月次祭
1日 [奈良]大神神社 10:00 月次祭
1日 [奈良]龍田大社 8:00 月次祭
1日 [奈良]廣瀬大社 7:00 月次祭
1日 [奈良]大和神社 月次祭
1日 [奈良]丹生川上神社 上社 朔旦祭
1日 [奈良]丹生川上神社 中社 月次祭
1日 [奈良]丹生川上神社 下社 月次祭
1日 [奈良]談山神社 10:00 月次祭
1日 [奈良]ならまち御霊神社 7:00 月次祭
11日 [奈良]橿原神宮 10:00 月次祭
15日 [京都]平安神宮 9:30 月次祭
15日 [京都]石清水八幡宮 10:00 月次祭
15日 [京都]松尾大社 10:00 月次祭
15日 [京都]貴船神社 10:00 末社祭
15日 [京都]八坂神社 10:00 月次祭
15日 [京都]梅宮大社 9:00 月次祭
15日 [京都]愛宕神社 10:00 月次祭
15日 [京都]粟田神社 6:00 月次祭
15日 [奈良]石上神宮 10:00 月次祭
15日 [奈良]大神神社 10:00 講社崇敬会月次祭
15日 [奈良]大和神社 月次祭
15日 [奈良]丹生川上神社 上社 月次祭
15日 [奈良]ならまち御霊神社 7:00 月次祭
16日 [奈良]丹生川上神社 中社 月次祭
17日 [奈良]談山神社 10:00 月次祭
17日 [奈良]率川神社 10:00 月次祭
18日 [京都]吉田神社 9:30 月次祭
19日 [京都]平安神宮 9:30 月次祭
19日 [京都]石清水八幡宮 10:00 厄除開運交通安全祈願祭
21日 [京都]白峯神宮 月次祭 於:崇徳天皇御廟所
21日 [奈良]橿原神宮 10:00 月次祭
21日 [奈良]春日大社 10:00 旬祭
22日 [京都]由岐神社 9:00 月次祭
23日 [京都]愛宕神社 10:00 月次祭
25日 [京都]北野天満宮 10:00 月次祭 天神市(骨董市)
はる家 東山
築百有餘年の京町家、職住一體の「表屋造り」を傳へる[はる家 東山]。京都驛から地下鐡十五分、年間千二百万人以上が訪れる京都東山に位置し、清水寺、祇園、南禅寺ほかへ徒歩圏内。朝晩は白川の小川沿ひを歩く清々しい散策をお楽しみ頂けます。
所在地:〒605-0026 京都市東山區古川町542番地4
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はる家 梅小路
築百有餘年の京町家四棟が隣り合ふ[はる家 梅小路]。京都驛から程近く清水寺、祇園、金閣寺ほかにバス一本。町家ならではの「通り庭」があり、坪庭、出格子、圓窓、縁側など傳統的な京都の佇まひを傳へます。
所在地:〒600-8834 京都市下京區和気町1番地12
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はる家 ならまち
築百二十年を超える奈良の庄屋屋敷。日本庭園、家族風呂、縁側つき客室など傳統的な日本家屋の佇まひを傳へます。歴史的な町並み「ならまち」に位置し、奈良公園、大佛殿ほか五つの世界遺産に徒歩圏。奈良驛からバス八分(徒歩十五分)。
所在地:〒630-8342 奈良市南袋町31番地4
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はる家 総合豫約 075-533-3310(8:30-14:30|16:00-21:00)